A君は更に聞きました。
「では、他の人達、いえ、霊魂達はどうしているのですか?」
「他の者はいろいろじゃ。
この世界は念が全てじゃ。念で何でもできる。
ということは、念が強い者が最強なのじゃ。
どんな武器だって、念の力で出せるのだからな。
念が強ければ、誰にも喧嘩で負けることはない。
だから、念の力を強くする訓練をする者は大勢いる。」
「どんな訓練ですか?」
「お前がされたような事じゃ。」
「では、他人を襲うのですか?」
「それが一番の訓練だからな。」
「弱い奴を襲うのが一番良い。強い奴では、自分がやられてしまうからな。」
「ぼくは弱いのですか?」
「お前はこの世界のことを知らない。念についても知らなかった。当然弱い。悔しいか?」
「悔しいです。」
「そうか。だが、やめとけ。
悔しいから念を強くしようとする。復讐しようとする。その結果、念による戦いになる。
そして、いつか必ず八つ裂きにされる。腹に手を入れられて内臓をばら蒔かれるぞ。」
「ええっっっ!」
「念が全ての世界だぞ。誰も仕事をしない世界だ。警察もいない。」
「では、強い者の言いなりになりませんか?」
「そうだ。だからグループでいるんだよ。集団でいれば、誰も襲って来ない。集団の念は個人の念よりも強いからだ。
だから、何もせずにここにいることが多いんだよ。
怖い奴が来たという情報が入れば、ここに集まって戦闘態勢を取るしかない。
そうでないと、半殺しでは済まない。」
「どうしてそこまで残酷なのですか?」
「お前はまだこの世界が分かっていない。
この世界に長くいたら、心が悲しくて居られなくなる。
何も楽しみがないからだ。霊魂が集まっても会話は何もない。何もしていないからだ。新しい話題がないんだ。仕事もしていない。テレビもない。
そうしたら、念で誰かを痛め付けるしか、楽しみがないと考える者が現れる。
そうなったら、外を歩けなくなる。」
「お前はまだ、来て間もない。だから、まだ、この世界の本当の恐ろしさが分かっていないのだ。」
「何もすることがなく、何の生き甲斐もなく、それでいて、襲われる危険がある。そんな感じですか?」
「それが実感を伴って分かるようになったら、とにかく死にたくなる。だが、この体は死なないのだ。
本当の苦しみは、死ねないということだ。」
A君は黙ってしまった。

