6 霊魂の世界の現実

A君は更に聞きました。

「では、他の人達、いえ、霊魂達はどうしているのですか?」

 

「他の者はいろいろじゃ。

この世界は念が全てじゃ。念で何でもできる。

ということは、念が強い者が最強なのじゃ。

どんな武器だって、念の力で出せるのだからな。

念が強ければ、誰にも喧嘩で負けることはない。

だから、念の力を強くする訓練をする者は大勢いる。」

 

「どんな訓練ですか?」

 

「お前がされたような事じゃ。」

 

「では、他人を襲うのですか?」

 

「それが一番の訓練だからな。」

 

「弱い奴を襲うのが一番良い。強い奴では、自分がやられてしまうからな。」

 

「ぼくは弱いのですか?」

 

「お前はこの世界のことを知らない。念についても知らなかった。当然弱い。悔しいか?」

 

「悔しいです。」

 

「そうか。だが、やめとけ。

悔しいから念を強くしようとする。復讐しようとする。その結果、念による戦いになる。

そして、いつか必ず八つ裂きにされる。腹に手を入れられて内臓をばら蒔かれるぞ。」

 

「ええっっっ!」

 

「念が全ての世界だぞ。誰も仕事をしない世界だ。警察もいない。」

 

「では、強い者の言いなりになりませんか?」

 

「そうだ。だからグループでいるんだよ。集団でいれば、誰も襲って来ない。集団の念は個人の念よりも強いからだ。

だから、何もせずにここにいることが多いんだよ。

怖い奴が来たという情報が入れば、ここに集まって戦闘態勢を取るしかない。

そうでないと、半殺しでは済まない。」

 

「どうしてそこまで残酷なのですか?」

 

「お前はまだこの世界が分かっていない。

この世界に長くいたら、心が悲しくて居られなくなる。

何も楽しみがないからだ。霊魂が集まっても会話は何もない。何もしていないからだ。新しい話題がないんだ。仕事もしていない。テレビもない。

そうしたら、念で誰かを痛め付けるしか、楽しみがないと考える者が現れる。

そうなったら、外を歩けなくなる。」

「お前はまだ、来て間もない。だから、まだ、この世界の本当の恐ろしさが分かっていないのだ。」

 

「何もすることがなく、何の生き甲斐もなく、それでいて、襲われる危険がある。そんな感じですか?」

 

「それが実感を伴って分かるようになったら、とにかく死にたくなる。だが、この体は死なないのだ。

本当の苦しみは、死ねないということだ。」

 

A君は黙ってしまった。

 

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