3 おじいさん

A君は他人を警戒するようになりました。

(ここがどこだか分からないけれど、少なくとも初対面の人に暴力を振るう奴がいる。)

A君は誰かに会っても気軽に声を掛けないことにしました。

ですが、それでは、ここの世界ことが何も分かりません。いつかは誰かに聞かなくてはなりません。

なるべく人の良さそうな人を探すことにしました。

 

この世の時間に直すと3時間以上経ちました。小学生くらいの女の子を見掛けました。

A君は、今度はゆっくりと近寄りました。そして、言いました。

「ここはどこですか?」

 

A君の質問に女の子が答えました。

「貴方は誰ですか?」

「僕は死んでここに来たばかりです。まだ何も分かりません。

生きていた頃は○○と言いました。」

すると、女の子が言いました。

 

「貴方は悪い人だったんですね?」

 

「悪い人? どういうことですか?」

 

「ここに来たんだから貴方は悪人なんです。」

 

A君が驚くと、女の子は大きな声で笑いました。

そして、後ろを向きました。

 

A君が、何が何だか分からない、と思っていた時、女の子が振り向きました。

そして、また、笑いました。

 

A君は腰が抜けました。

女の子の顔がおじいさんの顔になったからです。

 

おじいさんの顔の女の子が言いました。

「わしは80歳で死んだのじゃ。」

 

「はあ…。」

 

A君が驚くと、おじいさんの顔の女の子が続けました。

「お前は知らないんだろうが、霊魂は皆、顔を変えられるんじゃ。

服を着ているということは、服を念じたということじゃ。

つまり、この世界は念じればどのようにでも変化する世界なんじゃ。だから、顔も姿も自由自在に変えられるんじゃ。

わしはお前をからかったんじゃ。」

 

「ええーーっ。」

 

A君は混乱しました。

女の子だからと安心していたのに、これでは、誰一人、安心して話せないからでした。

おじいさんの霊魂が言いました。

「お前は何も知らん。

このままじゃと、半殺しにされるぞ。」

 

「もうされました。だから警戒しているんです。」

 

「そうか。ならば、話は早い。

わしに付いて来なさい。わしの仲間を紹介してやろう。

お前はまだ分かっていないから教えてやる。

ここは地獄ではない。地獄というのは、本当に恐ろしい世界じゃ。

地獄ではない下の世界からここに上がってきた者を知っているが、それでも、大変辛い世界じゃ。

お前は幸せ者じゃ」

 

「幸せなんですか?」

 

「そうじゃ。わしに付いて来れば、痛めつけられなくて済む。」

「分かりました。付いて行きます。

ですが、痛め付けられるということは、どちらかというと、下の世界なんですね?」

 

「まさか。標準じゃ。

上には上があるが、下にも下がある。

普通の人間が死ぬと、皆一度は半殺しになる、それが標準じゃ。

問題なのは、これからじゃ。」

 

おじいさんの言葉に納得できないA君でしたが、おじいさんはいきなり半殺しにはしませんでした。とにかく付いて行くことになったのでした。

 

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