A君がおじいさんに聞きました。
「ここにいる人達、いえ、霊魂達は、いつも何をしていらっしゃるのですか?」
おじいさんが答えました。
「何を、と言われると、何もしていない。」
「それで生活できるのですか?」
「お前はまだ何も知らんのか。
この世界では食事がいらんのじゃ。お前、腹が減らないだろ。」
「はい。そういえば減りません。」
「本当は家もいらない。
なぜなら、雨が降らんからじゃ。もちろん、雪も降らん。
太陽が見当たらなかっただろ。
この世界には太陽がない。それなのに、どうしてなのか、明るい。
そうなると、いつまで経っても夜にならない。おまけに、眠くならんときている。
だから、本当は家もいらんのだ。だが、皆、家がないと落ち着かんのじゃ。
食べなくても良い。着るものも、家も、念で出る。
つまり、欲しいものは何でも手に入る。働く必要がないんじゃよ。」
「だから、ここで、ただ居るのですか?」
「他にすることがないからなあ。」
「そんな暮らし、楽しいですか?」
「楽しい?
楽しくはないさ。だが、何もすることがない。
食事もしない。男女の関係もない。この世界では子供ができない。肉体がないからじゃ。
こっちの世界の体はどんな風にでも変わる。だが、生殖機能がない。
何しろ、性欲も湧かないからの。若くても同じだぞ。」
「では、人口、いや、なんて言うのか分からないけど、人数は増えないのですか?」
「増える時もある。お前が来たからな。」
A君は半ば呆れてしまうのでした。
おじいさんが話を続けました。
「ここでは、楽しみは何もない。
ゲームもない。
将棋をしても、囲碁をしても、相手が考えると、相手の思いが伝わってくるのじゃ。
相手もこちらの手が読める。つまらないぞ。すぐに飽きる。
その上、テレビもない。
テレビというものは念で出せる。
映れ、と念じれば、映る。だが、実際に放送している訳ではない。
自分の記憶が混乱して、それが映っている、という感じじゃ。すぐに飽きる。」
「では、本当に何の楽しみもないのですか?」
「ない。何でも出せるが、すぐ、飽きる。」
「では、何を生き甲斐にして生きるのですか?」
「生き甲斐?
そんなことを考えていると、悲しくなるぞ。」
A君はすでに悲しくなっていました。

