親切にする事は良い事です。
ですが、時々、迷惑がられる事もあります。
例えば、電車で席を譲ったら、譲られた高齢者に嫌な顔をされた、という話もあります。
譲られた人から見れば、自分はまだ老人ではなかったのでしょう。
人は他者の都合や事情など分かりません。そうなると、何もしない方が無難だという事になってしまいます。
実際の所、若い人でも腰を痛めていると、席を譲ってはいられません。高齢者の視線を感じても無視するしかありません。
人間は他人の心や気持ちが読めませんから、何が親切なのかも分かりにくいのです。
そんな人間であっても、死後の世界に入ると変わります。
幽質の世界は相手の思いが通じるからです。
幽質の世界では適切な親切ができるのでしょうか?
現実はそうでもないようです。
何しろ、電車がありません。重力に縛られませんから、誰でも自在に移動できます。
ゴミも存在しません。あっても、念で消せます。
腰が曲がっている人もいなければ、妊婦もいません。
幽質の世界でできる親切は一つだけです。
入ったばかりで、幽質の世界が分からない人の為に、新しい世界について教えてあげる事だけです。
それ以外は何も要りません。
新しい人もそのうち慣れます。
ようやく本当の親切ができると思ったら、実はできないのでした。